第109章

エレベーターの扉がすべるように開くと、私はヘンリーのほうを一瞥することさえなく、弾かれたように外へ飛び出した。背後では同僚たちがその場に残り、ひそひそと何かをささやき合っている。けれど私には、ただこの場から逃げ出したいという思いしかなかった。あわただしい足音が追いかけてくる。振り返らなくてもわかった。人混みを押し分けて追いつこうとしているのはヘンリーだ。

「ソフィア!」

彼の声が病院の廊下に響き渡った。

「いったい誰にそんなつれない態度を取ってるんだ?」

私は歩みを止めなかった。足取りは一定で、固い。胸の奥では、何かがもう完全に壊れてしまっていた。こんな終わりのない駆け引きに、いったい...

ログインして続きを読む